アーツチャレンジ2016の展評を審査員でもある建築・美術評論家五十嵐太郎さんより頂きました。
artscape.jp/report/review/10121128_1735.html
こちらのwebサイトからもご覧いただけますが、以下コピーして貼り付けさせて頂きました。
(写真はありません。)
会期:2016/02/23~2016/03/06
愛知芸術文化センター[愛知県]
審査を担当したアーツチャレンジ2016は、愛知芸術文化センターの正式展示スペース以外の空間を使う公募である。1~3回目、去年と今回も関わったので経緯を見てきたが、クオリティが高く、安定性の高い作品の展覧会に成長した。が、あえて欲を言えば、ひとつくらい思い切ったチャンレジをして、ときには失敗するような問題作が入ってもよかったかもしれない。印象に残った作品をいくつか。
地下階段の宮本宗は、人工補綴としてのクレーン+身体の大型インスタレーションの力作である。照沼敦朗は、カーマニアの自身を投影したミエテルノゾム君を軸に絵画、彫刻、映像を展開。棒読みラップのアニメが強烈だった。
水野里奈は、味覚→視覚の変換を提示するが、あいちトリエンナーレ2013、VOCA、豊川で見た絵画から進化し、複数の空間を重層的にたたみ込む表現が感じられて、そこが興味深い。11階のL字回廊の田口友里衣は、小さなガラス玉と石によるささやかな庭を設置し、それが屋外のビル群と共鳴する。
伊藤久也は、悪のカタチをワークショップによってさまざまな人に制作してもらう作品だが、参加者から語られる言葉が面白い。池谷保の絵は、目を突き刺す棘のようなテクスチャに覆われた表面である。一方、大崎土夢はマチエールの勝負ではなく、かたちと内容のズレが連鎖しながら、複数の絵画がさまざまな関係性を構築していく知的な空間をつくる。
写真:左=上から、宮本宗、照沼敦朗、水野里奈 右=上から、田口友里衣、伊藤久也、池谷保、大崎土夢
2016/02/27(土)(五十嵐太郎)